【博士就活体験談】博士から大手メーカーの研究職の内定を得るまで(2022卒)

博士課程3年間を終えると、卒業後の進路は大きく分けると、大学の研究室などのアカデミックでポスドク(場合によっては助教)となるか、企業への就職かという2つになるとと思います。

私は博士課程2022年卒予定ですが、企業への就職を選び、結果として業界売上で5本の指に入る大手企業のメーカーの研究職の内定をいただきました。私の就活の体験談、感想、振り返りなどを書いていきます。

なにかの参考になれば幸いです。1万文字以上の比較的長文になっているので、必要な項目には目次からジャンプしてください。

 私の就活体験談

結論から言いますと20社程度エントリーシートを提出し、内定を獲得しました。感想として博士の企業への就活は大変だと感じました。もちろん、アカデミックの道が楽だというわけではないです。

私は博士課程に進学したときから企業への就職を決めていました。そのため、そこでアカデミックへ進むかといった迷いはありませんでした。ちなみに私の専攻は化学系でしたが、博士、院卒の募集はそこまで少ないとは感じませんでした。またコロナや不景気も採用枠に無茶苦茶影響を与えたということはなかったと思います。メーカーなどを中心に見ていきましたが、体感として機械系や情報系の募集は多いなと感じました。

具体的に就活を始めたのは博士課程2年の10月ころからでした。この時期から博士卒のエントリー受付などが始まったので、それに合わせて就活をはじめたという感じです。正直研究の進捗や体調の問題も抱えていたので、もっと早めから動いておけば良かったと思っています。

具体的にはじめた就活は企業のホームページを見たり、合同説明会に行くなど情報を集めたりといった感じです。それと合わせて自己分析です。

私が見た感じでは、エントリー(エントリーシート)の締め切りは早い企業で10月末といった感じでした。

その後、研究や論文の執筆、学会発表などと並行して3月頃まで7~8社程度エントリーを提出しました。正直、選考は早いほうが有利だったと感じたのでこの時期までのエントリーシートの提出数はもっと多いほうが良かったと思います。

また、企業によっては2月の時点ではホームページでは情報が公開されてはいないが、リクルーターなどが説明会を行い、実質就活が行われているといったパターンもありました。

だいたい3月頃から学部や修士卒向けの就活が本格的にはじまり、説明会も盛んに開催されるようになりました。今年(2021年)はほとんどがオンライン開催でした。研究室から簡単に就活に参加できる分、研究と並行して就活を行いやすくなったのではないかと思います。

書類選考の通過具合ですが、自分の研究内容と企業の事業内容がマッチしている企業は、書類選考が通過しやすく、ほとんどマッチしていない企業は書類選考で落ちるという感触でした。

最終的にエントリーシートを提出した企業は20社程度でした。余裕をもって就活を進めて内定を複数社獲得したいと思うなら、もっとエントリーしていていいと思います。

また、私は推薦を使いませんでしたが、学部や科、教授などからの推薦が利用できる状況にあり、第一志望がはっきり決まっているなら推薦を使ったほうがいいと思います。推薦を使うと、書類選考の通過が確約されていたり、選考が優先して行われるケースが見られました。

書類選考を通過した企業はその後、オンラインでの面接となりました。多いパターンは一次面接が人事との面接、二次面接が技術面接、三次面接が役員面接といった流れでした。

その後、縁のあった第一志望の大手企業の面接で合格をいただき、4月末頃に研究職*1内定をもらうことになりました。

周りの早い学生は修士でも3月末に内定をもらっていたので、4月くらいからは焦りも生まれました。また、だんだん選考途中でお祈りされるケースが増えてきて、焦って4月に新たに書類を書いて応募したりしました。企業の選考スケジュールにもよりますが、早めに内定をもらっておくと、ゆとりができると思います。

就活はいつ頃から始めると良かったか

就活は博士課程に入ったときから始まっているといっていいと思います。なにが言いたいか具体的に説明します。

企業は博士卒の学生には即戦力として活躍してくれることを期待しています。これは私の就活を通しての感想でもあり、ある企業のリクルーターの言葉でもあります。実際に、ほとんどの企業で博士卒の月給は修士課程で入社して3年間勤め昇給していった場合の月給額に設定されていると思います。つまり修士卒で入社する学生を3年間教育していったレベルに相当するレベルのスキルを求めているということです。そういう点では博士新卒でありながら、中途採用のような視点からも評価されていると考えていいと思います。

そして特に研究職であれば、博士卒には次のようなスキルが求められていると思います。

  • 高い専門性
  • 研究を主体的、積極的に遂行する能力
  • チームで仕事や研究を進めていくために必要なコミュニケーション能力
  • 顧客や社内の方に行った研究内容をわかりやすく伝えるプレゼンテーション能力
  • 海外の仕事相手とのやり取りを行うことができる英語力

そこで企業は、こういった能力を持っているかどうかをエントリーシートや面接で確認しようとしてきます。

つまり、こういった能力を持っていることを示せれば、内定に大きく近づくわけです。そのためには、研究を主体的に進めたエピソード、実際に研究の中で出したオリジナルのアイデア、共同研究などのチームで取り組んだ経験チームでの活動を改善したエピソードなどを伝えるわけです。

つまり博士課程での研究を主体的にしっかり行っておくことが"就活"といえるでしょう。そういう広い意味での就活は博士課程に入ったときから始まっているといっていいと思います。さらに実績があると、能力を示す大きな根拠になります。

つまり、研究を主体的に進め、成果を出したことを示す学会発表筆頭著者の論文、プレゼンテーション能力を示す実績として学会賞の受賞、英語力を示すTOEICなどです。

こういった実績は、就活を始めようと思ったときにすぐにできることではないですよね。やはり、日頃の研究をしっかり進めていくことが就活になるといえると思います。

そこで、私が自分の就活での反省を含めて博士課程に入ってからの就活を考えると下のような図になります。

f:id:syerox:20210514203817j:plain博士課程1年の時はしっかり研究に専念し、さらにTOEICなども受験しておくといいと思います。また以前は学会発表を聞いてくれた企業の方が声をかけてくれたというケースもあったようです。今は学会もオンライン開催が多いので事情が変わってくると思いますが、学会で企業の方の発表があったときに発表を聞いておくと企業での事業や研究内容の理解が進みます。

博士2年になったあたりから自己分析などを行い、企業を選ぶ際の就活の軸を決めておくといいと思います。余裕があればインターンシップに参加しておくのもいいと思います。

このインターンシップあたりから本格的な就活がはじまるといえると思います。私が経験した2022卒向けの2021年の就活状況では、実際のみんながイメージする就活はインターンシップに合わせるなら博士2年の6月くらいから、インターンシップに参加しないなら博士2年の9月くらいから始めると出遅れるということはなかったと思います。

また、就活ではエントリーシートでは数百文字での研究概要紹介A4で2~3枚程度での研究概要の紹介や、技術面接ではプレゼンテーション資料が求められます。こういった資料を博士2年くらいから、あらかじめ準備しておくと、就活が始まったときにエントリーシートの中でも志望動機などの項目に集中できると思います。

博士2年の8月~10月頃からエントリーシートの提出やSPIなどの適性検査の対策を進めていき、随時面接などを進めていくといいと思います。

就活は先手必勝の部分があると感じていて、早めに動いて、エントリーシートなども周りの人に少し見てもらうくらいの余裕があればいいと思います。

自己分析(己を知る)

"敵を知り己を知れば百戦殆うからず"という言葉もあるように、自分のことを振り返っておくといいのでしょう。

自己分析の詳細かつ具体的な方法などは専門外なのでリクナビとかマイナビとか大学の就活セミナーなどで調べるといいと思います。とりあえず、自分の性格、特徴、長所、短所などから企業選びの軸を決めておくといいと思います。また時間のあるうちに自己PRポイントなどをまとめておくと、エントリーシートもスムーズに書けます

また、博士課程で企業の就活の面接を受けると、「なぜ博士課程に進学したのですか?」「アカデミックに進むという道もあると思うんだけど、なぜ企業へ就職するのですが?」といった質問は出題率100%じゃないかと感じるくらい聞かれます。自分なりの回答を用意しておくといいと思います。もちろん企業のほうが待遇が良いみたいな回答はすぐ思いつくのですが、面接での印象は良くないと思います。

それに後悔しないためにも、アカデミックに進むのか、企業に就職するのか、考えておく時間をとっておくことは大切だと思います。特にアカデミックに進もうと思っていたけど、博士3年でやっぱり企業に就職しようと転換すると、最近は通年採用を語る企業も増えてきてはいますが、非常に苦しい就活になると思います。

業界研究・企業研究(敵を知る)

"敵を知り己を知れば百戦殆うからず"という言葉もあるように、敵というと言葉が悪いですが、企業のことも調べておきましょう。

「いろいろな企業がある中でなぜその企業なのか?」はしっかり決めておくと、良い志望動機に繋がり、内定も近づくと思います。

大学のアドバイザーは日経新聞を読めと言っていました。また企業のホームページも新卒採用向けのページだけではなく、投資家向けのIR情報なども簡単に調べたり、企業が出している研究成果発表資料やプレスリリースなども目を通しておくと、企業の研究内容や、力を入れている(入れようとしている)事業がわかります。私の就活の感想ですが、博士の選考では自分の専門と企業の事業のマッチングは重視されていると感じたので、最悪の場合の滑り止めになる内定をもらうためにも、事業内容などはある程度調べておくことが大切です。

説明会

コロナ禍の影響もあって、ほぼすべてがweb上でのオンライン説明会やオンライン座談会でした。オンライン説明会は2パターンあり、

  • オンライン上で公開されている動画を見る説明会
  • 実際にリアルタイムで社員が説明を行う説明会

がありました。ノートパソコンやスマートフォンがあれば、どこからでも参加できるのですが、リアルタイムで行われる説明会では「できればカメラをONにしてください」と言われるケースは多かったので、私服の指定がない場合はスーツの着用は必須だと思います。

この説明会や座談会で、エントリーシートに書く志望動機に結びつきそうな「企業の具体的な研究内容」や「研究開発環境」「企業が求めている能力」を聞いておく必要があると思います。

インターンシップ・推薦の利用

私は博士課程のときにはインターンシップも行かなかったですし、推薦も使わなかったのですが、できる人は利用するといいと思います。

インターンシップは企業の方と話す機会が設けられたり、リクルーターと知り合える機会になると思います。またインターンシップの選考は就活の選考の事前練習として臨むこともできると思います。インターンシップの選考の通過率は、実際の就活の選考の通過率の指標にもなると思いますので、戦略的にインターンシップに応募しておいてもいいと思います。

また、推薦も使ったほうが就活は楽だという話は聞きました。

インターンシップ、推薦は就活では私が利用しなかったように必須ではないですが、利用できるものは利用するといいと思います。

早めのエントリーシート・資料・書類選考の準備

証明写真

証明写真は絶対必要でした。ほとんどがエントリーシートがweb提出だったので、写真のデータを渡してくれる写真屋さんを利用するといいと思います。私の場合、近所のカメラのキタムラで撮影してもらったのですが、左右の肩の高さがずれていたり、表情が硬かったりと100%満足いく写真では無かったです。就活用の写真を丁寧に撮影してくれるところを利用すれば良かったと後悔しました。

エントリーシート・研究紹介資料

まず、エントリーシートや研究概要紹介資料、技術プレゼンテーション資料などを徹夜でギリギリに作るよりは事前にしっかり作っておいたほうがクオリティが高くなることは言うまでもないことです。

また、手書きのエントリーシートが必要な企業もありました。エントリーシートの形式は早めに調べておいたほうがいいです。

エントリーシートは早めに目を通して、質問事項をgoogleドライブ上のドキュメントに書いていきました。「どの職種を希望しますか?」のような選択肢のある質問もその回答をドキュメントにメモしておきました。

意外と企業によって質問内容や制限文字数が異なるため、あまり使いまわしはできませんでした。そのため、私は思った以上に時間がかかりました。

次にエントリーシートの提出ですが、例えば企業によってはエントリーシートの提出締め切りは12月末と1月末にそれぞれ設けているという企業がありました。

おそらく企業の中ではある程度、具体的な採用計画があって、この事業には何人程度採用しようということがある程度決められていると思います。そして、選考を最後の締め切りに出すと、実は最初の締め切りでこの専門性をもつ人材の募集は終わっているといったケースがあるのではないでしょうか。

私の体験ですが、二次、三次の募集締め切りで応募した企業の書類選考の通過率は低かったです。

早めに準備をして先手必勝で攻めたほうがいいと思います。

また博士課程の学生だと学振DC1やDC2で研究概要を紹介した資料がある人が多いと思います。しかし、学振の資料が研究内容を伝える資料であるのに対して、就活の研究紹介資料は自己PRのための資料です。伝える内容が違うため、学振の申請書のコピペではなく、就活という観点を意識して就活用の研究紹介資料を準備しておくといいと思います。

他に博士の就活でも学部や修士のときの成績の提出を求められる場合がありました。特に学部や修士と博士課程で大学が変わっている場合は事前に準備しておく必要があると思います。

志望動機

志望動機はエントリーシートでほぼ100%聞かれると思います。また面接でもよく聞かれる質問です。私の体感ですが、志望動機には「専門を活かして働きたい」「社会に貢献したい」「人々の生活を豊かにしたい」「風通しの良い社風に魅力を感じた」といった、どんな会社でも当てはまるような内容は書きやすいのですが、良い評価はもらえていなかったと感じました。

一方で、「その会社の事業内容」などと「自分が会社に入社したらやりたいこと」を具体的にリンクさせた志望動機は評価が高かったように感じました。こういった志望動機を書くには、説明会や先輩社員との座談会などで具体的な研究開発内容や研究開発環境などの情報をしっかり仕入れておくと良かったです。

動画選考

企業によっては「自分をPRする30秒の動画を提出してください」といった動画選考がある企業もありました。撮影はノートパソコンやスマホでできると思いますが、納得いくものを撮ろうとすると時間がかかりました。私は技術がなかったので編集はしませんでしたが、技術がある人は文字や画像などを加える編集をしてもいいのかもしれません。

適性検査

ほとんどの企業で適性検査がありますが、これも能力検査と性格検査あわせて60分くらいはかかったりします。webの適性検査だと使いまわしはできないケースがすべてだったので、他の資料の準備や適性検査対策は早めに取り組んでおくといいと思います。適性検査のレベルの感想は私の受けたセンター試験の国語の現代文、高校数学IA程度の計算、センター試験程度の英語くらいの感じだったので、しばらくそういった問題に触れてなかった人は対策しておかないと痛い目にあうかもしれません。

面接対策(グループディスカッション・人事面接・技術面接)

面接では余裕をもって準備して、事前に想定される質問は回答を準備しておくといいと思います。また、ほぼ100%逆質問の機会が与えられるので、逆質問もいくつか準備しておくといいと思います。

グループディスカッション

1回だけグループディスカッションを経験しました。日頃の研究室での話し合いや進捗報告で相手の話をしっかり聞き、自分の意見を主張して議論を深めていけるようにしておくといいと思います。私はグループディスカッションの内容のまとめの発表者に立候補したので、そういった部分も評価されて選考通過したのかなと思いました。

人事面接

最初は人事との面接が行われるケースが多かったです。カジュアル面接と書かれていても、しっかり質問されるケースがありましたので、しっかり対策をしておくと有利だと思います。

多かった質問をある程度書いておきます。

  • 自己紹介、自己PRを2~3分でしてください
  • あなたの長所はなんですか?逆に短所はなんですか?短所に対して工夫していることはありますか?
  • なぜ、この学部を選んだのですか?なぜ博士まで進学したのですか?
  • 博士課程は予定通り修了できそうですか?
  • なぜ企業への就職を考えているのですか?(アカデミックには進まないのですか?)
  • 趣味、特技はなんですか?
  • 志望動機はなんですか?
  • 就活の軸(大切にしていること)はなんですか?
  • 弊社のどういったところに魅力を感じますか?弊社のマイナスに思う点はどこですか?
  • 弊社でどんなことがしたいですか?
  • 希望と違う業務、職種になったらどうしますか?
  • 就活状況を教えてください。何社くらい受けていますか?今、他社の選考はどのくらい進んでいますか?
  • 内定後に推薦書を出してもらうのですが、問題ないですか?
  • 逆質問はありますか?

こんな感じだったかと思います。

技術面接

私の体験としては、二次面接・技術面接が鬼門になるケースが多かったです。技術面接を乗り越えられると内定に大きく近づくと思います。

技術面接は自分の研究内容を紹介します。しかしながら学会発表とは異なるという点は抑えておく必要があると思います。なぜなら、「学会発表は研究内容を伝える」のに対して、技術面接は研究内容を通して「自分を伝える」からだと思います。

技術面接で多かったパターンは「まず研究紹介を5分程度でしてください」というケースです。その後、数十分の質疑応答というパターンです。

資料は

  • 資料は準備しなくていいという企業
  • A4の資料を事前に送付する企業(面接官の手元には印刷されたものが配られている)
  • プレゼンテーション資料を用意してスライドをzoomやteamsなどで共有しながら発表する企業

といったパターンがありました。

どの場合でも重要なことは、相手に分かりやすく伝えることだと思います。ちょっと良くない言い方をするなら”わかった気にさせる”ことが求められているのではないかと感じました。

また、学会発表とは違う点が重視されていると思いました。具体的には

  • その研究の意義はなにか?
  • その研究が達成されると、社会にどう役に立つのか?
  • その研究が達成されると、利益が生まれるのか?

といった観点が重視されていると感じました。

例えば「この触媒開発が成功すると、排出される二酸化炭素から燃料になるアルコールを合成できるようになります」「この有機合成方法ができると、原料の百倍の価格になる薬を少ないステップで作れるようになります」といった研究がどのように役に立つのか、どのような利益につながるのかを説明できる準備をしておくといいと思います。

加えて研究のオリジナリティや研究の手法(プロセス)も問われていると思います。これは、実際に企業に入社したら「どのように研究を進めるか」を見ようとしているのだと思います。

また、研究を遂行する能力があるというアピールもできるといいと思います。何百回も合成を行ったというような泥臭さのアピールや、わかりやすい数値目標なども有効だと感じました。

逆質問

逆質問はいろいろしてみましたが、正解はわからないというのが正直な感想でした。

ただし、やはり調べればわかるようなことではなく、なにかしらの意図のある質問をしたり、自分の面接内で聞かれなかった長所をアピールできるような「私はTOEICで900点を取る英語力がありますが、御社で活用できるシーンはありますか?」といった質問を準備しておくといいのかなと思います。

オンライン面接

コロナウイルスや緊急事態宣言の影響が大きいと思いますが、面接はすべてオンラインでした。カメラの付いたノートパソコンを使って、マイク付きのヘッドホンを使って面接に望みました。ちなみに私はスーツを2着用意して、1着は家に置いておき、1着は研究室に置いていました。だいたい朝に面接があるときは自宅で面接をして、午後に面接があるときは大学(大学図書館)の会議室を借りたりして、スーツを来て面接を受け、終わったら着替えて研究に戻るといった生活をしてました。

ちなみに私は2月頃にノートパソコンが壊れて、むちゃくちゃ焦りました。修理をお願いするより、新しく購入したほうが早かったので、新しく購入しましたが、突然の痛い出費になりました。

あとは、相手の目を見るという癖で相手の面接官の映像を見てしまいがちですが、しっかりカメラを見て答えるようにするといいと思います。

聞いた話ではノートパソコンの下に本を置いたりして高さもちゃんと調節して臨んだ人もいたそうです。面接会場の雰囲気から会議室などで、大画面に自分の映像が映されてweb面接が行われていると感じたので、映りもよくなるようにしておくといいと思います。心理学だとメラビアンの法則といわれるような視覚の第一印象が非常に重要という話もあります。

周りの人を活用しましょう

周りの人というと具体的には、OBやOG、企業のリクルーター、大学のキャリアアドバイザー(就職支援室の方)や大手就職関連会社のアドバイザー、修士卒で企業に行った友達や周りの先輩、後輩などなどです。

特に博士卒で就活を考えていて、仮に入社している知り合いが修士卒だとしても、一度話を聞いてみたり、エントリーシートや志望動機の添削をお願いしてみるといいと思います。例えば、社風として"チームワーク"って言葉はすごく受けがいいとか、あると思います。また、説明会では言えないけど実は……なんて話もあるかもしれません。

私は大学のキャリアアドバイザーの方にもエントリーシートの添削や、面接対策などをしてもらいました。まず、大学入試などの試験と違って100%正解はないということと、それゆえにキャリアアドバイザーにも当たり外れがあるということは、頭に入れておくと良いと思います。

実際に同じようなエントリーシートの添削をお願いしても、「よく書けてるよ」といって具体的な指摘をしてくれなかったアドバイザーと、「”強み”はもっと違う、こういうふうに書き直したほうがいい」と言ってくれるアドバイザーがいました。アドバイザーの力だけとは一概には評価できませんが、結果として「よく書けてるよ」と言われたエントリーシートは書類選考で落ちて、「書き直したほうがいい」と言われて書き直した方は書類選考を通過しました。

あとは実際に博士で就活した人の話は貴重だと思います。博士から企業への就職した人の絶対数が少ないので、情報が少ないのが実情だと思います。周りも多くの人が「博士の就活は修士まではとは違う」ということだけ知っていて、具体的になにがどう違うのかはほとんど知らないという人が大半でした。

博士の採用って積極的なのか?

私もそうだったように実際、

・企業って博士の採用をどう捉えるているのだろうか?

・博士の採用って積極的に行われているのだろうか?

という疑問はあると思います。

就活をした感想として、おそらく研究職に限らず"即戦力になる博士は求められている"が答えだと思います。

学部卒や修士卒だといわゆるポテンシャル採用といわれるような、企業で人材を育てておくことを見据えた採用が行われていると思っています。周りでも修士の研究内容と全く違う事業を行っている会社の内定をもらったというケースはよく目にしました。

一方、博士は専門性と企業の事業内容のマッチングが重視されているように感じました。その理由は専門性の違う、良くない言い方をするなら素人の博士人材を育てるくらいなら修士、学士の学生を採用すると思われているからだと思います。

また博士は専門性が深いのは当然なので、専門性の深さが特別評価されるということは無いと思いました。

そして自分の専門領域がニッチであり。企業の事業内容とマッチしていない場合、専門性がマッチしていなくても即戦力となることを示せないと厳しい就活になると思います。

また、とある企業の面接では「博士って2年間で修了だと思うのですが、なぜあなたは3年間の予定なのですか?」と聞かれたこともありました。私は博士課程(博士後期課程)は3年間が普通だと認識しています(おそらく間違っていないはずです)。その面接官が早期修了して2年で博士を取得した学生を知っていてこのように思っていたのかもしれませんが、企業によっては博士課程への理解は進んでいない企業もあるのだと感じました。 

コロナ禍の影響は?

コロナの影響についても触れておきます。私の就活を行った範囲では、いわゆるメーカーなどの業界はコロナ禍で今年の採用を辞めるという企業はありませんでした。実際は採用人数を減らした企業はあったのかもしれません。

一方、コロナの影響で就活は説明会、適性検査、面接のほとんどがweb、オンラインで行われました。ノートパソコンとweb環境を整えておく必要性は感じました。大学のwi-fiだと通信が途切れることがあって、スマホのテザリングで乗り切るというケースもありました。

 利用したサイト・サービスと感想

リンクまでは貼りませんが、どんなサービスを利用したかと感想を書いておきます。

  • Gmail・グーグルドライブ
  • リクナビ
  • マイナビ
  • アカリク
  • Labbase
  • TECH OFFER
  • みん就
  • 各企業のサイト

Gmail・グーグルドライブ

高校の頃から使っていたgmailはあったのですが、就活用に名字+数字のgmailを取得して就活はすべてそのメールアドレスを利用しました。そのgmailには就活のメールしか来ない状況だったので、確認なども楽でした。

エントリーシートの下書きなどはグーグルドライブのドキュメントで編集、保存していました。

リクナビ・マイナビ

リクナビとマイナビは甲乙つけられませんが、どちらかにほとんどの企業が掲載されているんじゃないかと思うほどで、実際に利用しました。ただ博士新卒専用の応募はここに載ってないけど、既に始まっているというケースが多くあったので、各企業のサイトをしっかりチェックしておきましょう。

アカリク

院生やポスドクの就活サイトを謳っており、悪くはないのですが、求人数が少なく感じました。これは業界にも寄るかもしれません。またアカリクのエージェントサービスの利用で非公開求人の紹介などの話もあったのですが、専門領域とはマッチしていない求人で、業界は違うけど採用例はあるといった話はあったのですが、応募を見送りました。

ただ説明会に参加するとアマゾンギフト券が頂けた例があったので、このあたりは貧乏な私にはありがたかったです。

Labbase・TECHOFFER

いわゆるオファー型、逆求人型就活サイトです。他にも登録はしましたが、ほとんどオファーは来ず、私の場合はLabbaseとTECHOFFERの2サービスから来たオファーを利用しました。大学の人に聞いた話だと、関東圏の大学だと利用者が増えているけど、うちの大学はほとんど使われていなくて利用者を増やそうとしているみたいな話もあるそうです。

基本的に超大手大企業は利用していないのか、オファーはほとんどありませんが、大企業の中でも中堅といわれるようなレベルの企業からはオファーがもらえるという感じでした。

自分の研究内容だと、そういった業界でも活躍の場があるのかということを知る良い機会ではありました。ただマイナビやリクナビなどと比べると説明会をキャンセルすると、再申し込みできないといったサイトの質の悪さなどは感じました。

ちなみに二次面接で落とされた企業から、もう一度オファーが届くという不愉快な出来事もありました。企業の人事などの問題かサービスの問題かはわかりませんが、まだまだ発展途上という感じです。

また、オファーがあったからといって書類選考の通過が確約されているわけではないので、業界研究、企業研究がしっかりできていれば利用する価値はないかもしれません。

みん就

就活、口コミサイトです。不確実性の高い情報源ではありますが、「書類選考の結果来ましたか?」などの状況の質問をすると返信がある場合があって、他の学生の選考情報が得られます。怪しい情報戦ではあるのですが、どうやら自分は後回しにされていそうなので、別の企業にエントリーしておこうという動きはしていました。

まとめ

博士の就活は厳しいと思って、就活に臨んでいいと思います。博士だから就活が有利に進むということは無かったですし、研究との両立も大変です。

理系で大手企業の研究職や開発職を目指すなら、いわゆる偏差値の高い有名な大学の修士まで行き、推薦やリクルーターなどを利用して就活したほうが圧倒的に楽だと思います。その理由は、修士卒はある程度、企業での育成も見据えたポテンシャル採用が行われているのに対して、博士卒は即戦力となることが求めらているので、博士の専門と企業の事業や研究とのマッチングが重要になってくるからだと思います。博士を採用する企業の数も分野によって変わってきて、ニーズのあると感じた機械系や電気系、情報系、化学でも有機合成系は比較的募集も多いと感じました。私は専門性がギリギリマッチしてそうな企業から内定をいただくことができました。

他に聞きたいことなどありましたら、コメントなどで質問していただけると、答えられる範囲で回答しようと思います。

*1:正式には研究職という名称ではないのですが、仕事内容がいわゆる研究職であり、身バレ防止のためにも研究職と書いています。