うつ病の原因は「脳疲労」?うつ病の治療法についての文献の紹介と博士課程を振り返って

うつ病の原因は「脳疲労」?という文献を読みましたので、簡単に紹介します。

結論は、うつ病の原因は脳の疲労ではないか、うつ病を治すためには、"1, 休養、2,学業仕事から離れる時間を作る、3, ウォーキングや意識的にリラックスをする" です。 とりあえず引用部分だけでも、読めば参考になると思います。

かつて、うつ病は「心の風邪」と言われ、心の病気と考えられがちでした。私のうつ病の主治医で指導医の神田橋條治先生からうつ病の主な原因は「脳疲労」と教えてもらいました。

出典:堂園晴彦 堂園メディカルハウス 新薬と臨牀 70(9): 1078-1081, 2021.

自分もうつ病と診断される前や、診断されたときは、心の病気というイメージを持っていました。精神科医のyoutubeの動画や文献を読むうちに気づいたのですが、「心 = 脳」なんですよね。そして、脳も臓器の一つなんだと捉えられるようになりました。たしかに筋肉も使いすぎると筋肉痛になります。お酒も飲みすぎると、肝臓だけでアルコールの処理ができず、二日酔いになります。筋肉も肝臓も、さらに酷使すると、病院で治療が必要な、さらに重たい病気になるはずです。こう考えると、自分も、脳も情報の処理などのストレスを受けることで同じように疲労していっているという考えはすんなり理解できました。

では、どのような人が「脳疲労」を起こしやすいのでしょう。

まじめで、几帳面で、粘り強く、忍耐力のある人や、責任の重い仕事や地位に就き周囲からも期待され、常時正しい言動を求められる人が起こしやすいです。

特に、ノルマや締め切りのある仕事についている人は「脳疲労」を起こしがちです。期限のあるノルマ達成も脳にとっては重荷です。

また、自分を抑え、他者を重視し、周囲にはいつも明るく元気に振る舞い、疲れや悩んでいる顔を見せない人に多いです。(中略)

このような人は、自分が困っている時に、周囲の人に「手伝って」とか「どうすればいいの」とか、相談するのが苦手な人のようです。

出典:堂園晴彦 堂園メディカルハウス 新薬と臨牀 70(9): 1078-1081, 2021.

私も、自分のことをまじめや忍耐力があるというのは気が引けますが、根性があるといわれた経験はあったりするので、粘り強さや忍耐力という部分は当てはまっているように思います。

そして、研究も博士論文という大きなノルマと締め切りをずっと気にしていましたし、学会のアブストラクト、学会発表の資料の準備、投稿論文の査読のコメントに対する返信、毎月の進捗報告会、学振の申請書、と少し挙げただけでも、研究生活はノルマと締め切りのある仕事の連続だと思います。

そして、周囲の人に相談したり、助けを求めるのが苦手というのは、ずばり当てはまっていました。もともとコミュニケーションが苦手というのもあります。そして、なまじ能力があるので、頑張れば自分でできるというのもあって、周囲に助けを求めるタイミングを失ってしまいました。

では、どうすればうつを自己努力で克服できるでしょう。

治療の第一方針は当然脳を休ませることです。そのためには休養です。大切なのは「自分の意思で休む」と決めることです。(中略)

休養の次に大切なのは、作家の城山三郎氏の提言している"無所属の時間"の確保です。"無所属の時間"とは、家庭にも会社にも仕事や学業にも脳が関与していない時間、つまり趣味に没頭したりする時間です。旅に出たりするのもいいでしょう。

出典:堂園晴彦 堂園メディカルハウス 新薬と臨牀 70(9): 1078-1081, 2021.

冷静に振り返ると、私は休むという決断ができませんでした。最初に医者から「診断書を書くから、一か月休学したら」と言われたときに、休むと決断できていたら、回復も早かったのかもしれません。急がば回れということです。その時はまだ、大学にある程度通えていたので、どうにかなるという甘い見通しもあったように思います。

そして無所属の時間です。私はM2まではサークルに入っていたので、役職などはあったので無所属ではないですが、趣味に逃げる時間を取れていました。それが博士課程になって、これまでの遅れ(主著で論文が一報も受理されていない状況だったので)を取り戻そうくらいの気持ちで、趣味の時間を減らしていきました。私の場合、これがうつ病になるとどめになったのかなと振り返っています。

そして、ついぞ、自分で休むという決断ができませんでした、大学を無断欠席するような状態になってしまいまいましたが、「あと5分したら大学に行こう」ってのを繰り返したままズルズル夜になってしまうなんてことが何度もありました。いさぎよく休みますと連絡していたらよかったのかもしれません。

ちなみにこの無所属の時間は、例えばカフェで論文は無所属の時間には入らないようです。ただでさえ学業や研究で後れをとっているのに、そういった学業や研究から離れる時間を確保するというのは、なんとも苦しいものを感じます。

そして学生なので、旅に出るにもなかなかお金がないというのも悲しい状況でした。ちなみに学会発表は(コロナウイルス流行前は)遠出していましたが、発表に追われて、無所属の時間や旅にはならなかったなあと思います。

私がうつ病になった時の神田橋條治先生の治療の第一方針が歩くことでした。(中略)うつ病の治療も単純動作の繰り返しであるウォーキングが脳に負担が少なく有効です。歩くと筋肉が収縮し脳に血が巡り栄養や酸素が供給され、脳が活性化します。脳に活性酸素が蓄積されると脳疲労が発症します。運動で脳にしっかり必要な栄養がいくと、疲労物質の活性酸素が除去されます。(中略)

脳疲労状態は興奮神経の交換神経が戦闘状態であり、リラックス神経の副交感神経の働きが弱っています。現代人は戦闘状態が持続しているため、休む、つまり、リラックス下手な人が多いです。ただ、リラックスしようと積極的に考えた時点で脳は戦闘状態になってしまいます。リラックス状態の感覚とは机の上を力一杯掌で押し、急に緩めた時に感じる脱力感です。この感覚を脳に覚えさせ、お風呂に入った時に脱力し体を浮かせる感覚や、布団の上で仰向けに寝て「一寸死んでみる」と呪文を唱えながら前進の力を抜くポーズも重要です。

出典:堂園晴彦 堂園メディカルハウス 新薬と臨牀 70(9): 1078-1081, 2021.

自分の主治医の先生にもうつ病に運動は効果があると言われました。毎日とはいかない日もありますが、運動をするようにしています。私の主治医は30分のウォーキング、自転車なら60分のサイクリングといっていました。ただうつ状態がしんどいと、散歩にいく元気もでないもんでした。充分な休養ができていないのに無理は散歩する必要はないのかもしれません。樺沢紫苑先生はyoutubeで食事、睡眠、朝散歩が大切だと訴えています。特に朝の散歩は体内時計が前進する効果もあるようなので、*1夜型になって困っているという人は、夜に運動するより、朝に運動したほうがよさそうです。

子どものころは湯舟につかってぷかぷか浮いてみたりしたものですが、大学で一人暮らしを始めてからは、めっきりシャワーで済ますことが多くなっていました。睡眠で困っていると自分の主治医の先生に相談したら、湯舟につかることを勧められました。最近は入浴剤もいれて、なるべく湯舟につかるようにしています。

うつ病の時は、呼吸が浅くなりがちです。深呼吸が大切です。鼻から息を大きくゆっくりと吸います。この時に大切なのは、吸った息を下腹部(中略)に運ぶつもりで下腹部を膨らませます。次に下腹部にためていた息をゆっくりと自然に出していく感覚で、口から出しましょう。この呼吸を10回ほど朝夕、また気持ちが落ち込んだ時や睡眠前にするのもすすめます。

出典:堂園晴彦 堂園メディカルハウス 新薬と臨牀 70(9): 1078-1081, 2021.

たしかに呼吸も浅くなっているかもしれません。最近はマスクを着けていることも多く、ゆっくり外で深呼吸なんて、しばらくしてなかったなと振り返っています。

ここまで書いたすべてが必ずしも治療に効果があるというわけではないかもしれません。うつ病から立ち直るためには、主治医との出会いや、薬の治療も非常に重要だったと思っています。

ちなみに今回紹介した文献は、大坂なおみ選手のうつ病のことも絡めつつA4、4ページで書いてありました。興味のある方で、大学などに所属している方は図書館などに相談すると、全文読めるかもしれません。

自分も自殺を考えるくらい苦しめられましたが、うつ病ふくめた精神疾患は、10人いれば10通りの苦しさがあるように感じます。ただそれでも、私の経験が少しでも参考になれば幸いです。

参考文献

堂園晴彦 堂園メディカルハウス 新薬と臨牀 70(9): 1078-1081, 2021.

途中で紹介した、うつ病は脳病ということを語っている動画は以下にリンクを掲載しています。

www.youtube.com